一筋の光が射した。
彼は不満気だった。
「死なないの?」
「死なないよ。」
「裏切られるかもしれないのに?」
「まだ判らないから。」
彼の苛ついた表情を初めて見たような気がした。
いつの間にか、膝を抱えた少女は顔を上げていた。
「ありがとう。」
何がと問う前に少女は消えていた。
彼は変わらず、酷く不愉快そうな表情をしている。
「どうせ、先は苦しいんだ。」
「だから、何?」
私が一番避けたいのは、誰かが私のことで苦しむことだった。
当面それはないのだから、問題はないだろう。
舌打ちが聞こえたかと思うと、
彼もまた少女のようにいつの間にか居なくなっていた。
静寂。
少し容量が増えた部屋の中で、私は明日のことを考える。
ふと、明日を考えるのはとても久しぶりだなと思った。