少女は部屋の隅で膝を抱えていた。
どうしたのかと問うても、ごめんなさいと、ただ只管に謝罪を述べる。
「何も返せなくてごめんなさい。」
「何を返したいの。」
「幸せ。」
そう一言答えたきり、少女はまた謝罪を続けるのだった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいご」
私は、貴方に謝られるようなことは何一つされていない。
本来謝るべき人のところに行きなさい。
と、私が言うと、
私が謝るとあの人は悲しんでしまう。
だから、ここにいるのだ。
と、少女は泣いた。
違うでしょう。自分のためでしょう。
と、言いたくなったけれど、口には出さなかった。
彼は、
彼は少女を嗤っていた。
とても楽しそうに。
私はそれを見過ごした。
私は苛ついている。
彼にも少女にも、そして私自身にも。
死こそが救いだと彼は言う。
赦されるならば死をと少女は言う。
私は、
私は 、
そして、暗転。
気が付くと、辺り一面が真っ赤になっていた。
いつ間にか、彼と少女は消えている。
掃除を終えれば、また変わり映えのない毎日が続いていく。
私は安堵の溜め息を吐き、ベッドに横になった。
――目が覚めると、部屋の隅で少女が膝を抱えていた。
そして、それを嗤う彼。
私はまた包丁を握り締めた。