81 厭世的
『厭世的』の着ぐるみを着ている僕は、
この世の滅亡を望んだ振りをした。
僕が気に食わないのはいつだって
僕自身で。
本当は、
(この世のことなんかひとつも恨んじゃいなかったのに。)
82 お茶
出涸らしになって嫌われることのないように、
白湯みたいな人生を歩んできました。
無難なその人生は、どうにも味気なくて
たまには湯呑を引っ繰り返してみたくもなるのです。
83 ゲーム
その世界に通じるその世界だけのルールに則って
その世界で生きていく。
この世界に通じるこの世界だけのルールに則って
この世界で、僕らはやっぱり生きていく。
84 遺書
私を必要としてくれないものなんて消えてしまえ
と
願ったら、
この世のすべて
が
消えてしまったので、
きっと消えるべきは私だったのです。
(本当に、ごめんなさい)
85 人魚姫もどき
どれだけ言葉を並べてみても、
声が出せなきゃどうにもならない、
ので、
今日も僕はひとりぼっち。
(助けてという声を、誰か僕に。)
86 ホンジュラス
碇を降ろして降ろして降ろして
足りなくなった鎖を足す努力すら。
どうしたって安全圏が僕には好ましくて、
君のところまで泳いでいく勇気は出なかったんだ。
(僕は結局コロンブスにはなれなかった。)