お題

001 愛してる(あいしてる)

愛してる。
うわ言の様に呟く君に
目を伏せて、キスを。

彼は悪魔だと君が蔑む。
君のその表情の方が
よっぽど悪魔に見えたのは
誰にも内緒だ。

まだ付いてもいない傷を恐れる僕には
雨を吸って重くなった靴を脱ぎ捨てる
なんてことは出来ないのです。

家路を急ぐ人の舌打ちとか
そういうものに慣れながら
僕も家路を急ぐ。

毒されているなあと溜息を吐きつつ、
肩がぶつかった瞬間に舌打ちをした。

この世の生で耐えれば次の世では幸せに、なんて。
何て不確かなギャンブル。

一方的に捲くし立てる君を、
一方的に耳を塞ぐ私を、
一方的に見下す彼を、
一方的に目を伏せる僕を、

誰か叱って。

責められない為の逃げ道を、

嘘なんて吐いてない。
君が聞かなくて、僕が言わなかった。

ただそれだけ。

息を吐くように、嘘を吐く。
本当なんてとっくの疾うに埋もれて、

もしかしたら嘘こそ本当なのかもしれない。
なんて、君が笑った。

（それも嘘？）

おかしな話だ。
悪政の王を始末したら喜ばれた。

おかしな話だ。
だから、
他の邪魔な奴も始末していったのに、
何故か嘆かれ責められ、
今度は僕が始末されるらしい。

本当におかしな話だ。

不協和音なオルゴール。
それでも僕は好きだった。
不協和音な僕の恋。
それでも僕は好きだったんだ。