君がチョコレイトに埋もれてしまう前に引き留めたくて
そっと
影、を踏んだ。
鉢の中はどうにも手が滑る。
多分一生出られないだろうなとぼんやり考えた。
溺れ死ぬなら多分きっとそれも本望だと思った。
(振りをした。)
・
・
昔から変なものをよく見つける人間だった。
石ころでも動物でも。
だからそれを見つけたのも必然だったのかもしれない。
金魚が溺れていた。
まあ亀が溺れるのだから金魚だって溺れるんだろうとぼんやり思った。
だからといって、特に彼女にかける言葉は見当たらず、
僕はウォークマンの音量を上げた。
溺れながら微笑む彼女はとても綺麗だと思った。
思った、だけ。
手に入れたならば、
きっといつか消えてしまうから。
僕は黙って溺れる金魚を見送った。
・
・
時計の長針が何周かした頃、まだ同じ場所で彼女は溺れていた。
僕はそんな彼女を尻目にヘッドフォンを、
ヘッドフォン、を、
耳を塞ぐほど視界が鮮明になるのは何でなんだろうと思った。
僕は通り過ぎた道を引き返した。
2012/01/30 2012春M3宣伝用top
こ
の
世
界
は
こ
ん
な
に
綺
麗
で
、
愛
お
し
く
て
、
美
し
く
て
、
そ
ん
な
エ
イ
プ
リ
ル
フ
ー
ル
。
(明日になったら一昨日に置いてきた汚い私と向き合いましょう。)