空を仰ぐa
キミは汚いねと、
空が嗤っているように見えたので、
僕は俯いて歩きました。
蔑まれないよう、
蔑まれないよう、
そうして、
逃げて、逃げて、逃げて、
その先で、出会った貴方は、
ああ、空が綺麗だねと笑うのでした。
貴方のように綺麗だったら
空も味方になってくれたのでしょうか。
僕には多分一生解らないのだけど。
空を仰ぐb
太陽も月もあの空も、
全てが僕を責め立てるのだ。
と、君が言いました。
君は汚い、と、
そう嘲るのだと、
私にはそれらがきらきらとした
とても愛おしいものに見えるので、
その気持ちはきっと一生解りません。
けれど、
きっと、
太陽の温かさや、
月の優しさや、
あの空の澄み切った心を
教えることは出来るはずなので、
君の手を、取りました。
『さあ、話をしようよ。』
きれいなせかい
世界は綺麗だよ。と、君が笑う。
ああ、こんなにも世界は汚れているのに
何を言っているの。
優しくも易しくもないんだよ。
この世界は。
今だって僕を占めているのは
君をどうやって閉じ込めるか、
なのに、君は、
だって、今貴方と笑えているもの。
と言って、尚も無邪気に笑うのだ。
世界は、世界は、世界は 、
(ああ、もうどっちだっていいか。君が笑ってくれるなら。)
白黒論争
『これは白です。』
「いいや、これは黒です。」
『その理由を教えてください。』
「理由なんてありません、これは黒だから黒なのです。」
『でも、私には白に見えますので、』
「そんなのは知りません。これは黒です。」
『理由を言ってくれないと、』
「理由を言って貴方に理解できるのですか?」
『 、』
「理解出来たことがありましたか?」
『 でも、』
「これは黒なのです。」
(「理由」と「事実」、どっちが大事?)
虚言壁
大嫌い。と、君が言った。
私なんて大嫌いよ。と。
でも、僕は君が好きだよ。
と言うと、
間をおいて、
ありがとう、と
君がわらった。
蚊帳の外
「出てけ出てけ出てけ出てけ!
僕のことを誰も理解なんてしてくれないんだ!!」
ああ、何を当たり前のことを。
それが当然じゃないか。
大体君のことなど、
私だって理解したいと思わないね。
だって君はそこから動いてくれないじゃないか。
パラレルワールド
パラレルワールドというものがあるらしい。
そこでは、自分の心が相手に全て筒抜けなんだそうだ。
へえ、便利。
と、僕が言い、
へえ、不便。
と、君が言った。
このもどかしさを言葉にせずとも
伝えることが出来るのなら
素晴らしいことじゃないか。
と僕が言うと、
貴方、そんなに綺麗なの?
と、君が尋ねた、
ので、
僕は言葉を飲み込んだ。
月と太陽
昼は嫌いだよ。
誰も僕を見てくれないから。
夜は嫌いなの。
誰も私を見てくれないから。
でも、
僕は夜だって君がいることを、
私は昼だって貴方がいることを、
知ってる。
原因と結果
何で解ってくれないのってそんなの個人差があるだろ
君の物差しで測ればそりゃもうそれは本当に綺麗でさ
素敵なものなのかもしれないけど僕にとってはねそう
ゴミ同然なの言い方悪いけどああごめん怒らないでよ
解りたくないなんてそんなこと言ってないじゃないか
だって解ろうとしたって所詮僕らは別々の個体な訳で
どう足掻いたって同じ感覚を持つことは出来ない訳で
だから解った振りをしてない僕は良心的だと思うけど
ああもう君が欲しいのは何なの共感ああ素敵だとても
え違うの勘弁してよ何して欲しいのああもう我侭だな
つまりさ、
僕が言いたいのは、
きちんとその過程を言えってことだ。
ニンゲン説明書
【ご利用上の注意】
・共有したいことがある場合は
『言葉』を使用してください。
※本製品は製造上の都合により、
個体差が激しくなっております。
不具合なく共有するためには、
必ず『言葉』を使用するようにしてください。
・『言葉』を使用しても事柄により
共有できない場合もあります。
そんな時は根気強く『言葉』を使用し続けてください。
稀に時間差で反応する個体もあります。
・また『言葉』を使用することを拒む個体もありますが、
故障ではありません。
その場合は『言葉』以外のコミュニケーション、
『笑顔』などから始めてみてください。
・この製品は『繋がり』によって動いています。
『繋がり』を絶つと弱った後に停止します。
絶対に『繋がり』を絶たないで下さい。
皮膚
傍、が、辛い。
言葉、が、辛い。
君との間を隔ててしまうから。
傍、に、いたい。
言葉、が、痛い。
貴方はきっと忘れてしまうから。
痛い、辛い、